第40話 元気を取り戻す(その6)

元気を取り戻す(その6)

 趣味を生かす。

 小学校3年の作文に、「将来歳をとった時に困らないようたくさんの趣味を身につけたい」と書いていた。随分老成で、「子供の時から何を考えているのか」と担任は冷たい眼差しを向けられたことを覚えている。プロ野球選手になりたい(当時は川上から長嶋に人気が移り始めたころ)、とか、パイロットになって世界を飛び回りたいといった実現可能性の低い夢が好まれた。
 さて、そんな経緯から盤戯は色々やってきた。今回は囲碁を取り上げる。
 高校でオスグット病のため、陸上部が続けられなくなり、やむなく囲碁部に所属した。並べ方を知っていた程度で、大ザル碁であった。大学でも同好の同級生にいつも負かされていた。その後は、コンピューター相手にたまにやる程度であった。
 当センター赴任後、碁と認知症予防の研究をしている研究員がおり、平均89歳前後で囲碁の経験のない認知症の施設入居者らに声を掛け、教える人たちと教えない人たちに分けた研究で、週1回1時間、計15回行い、9路盤(本来は19路盤)で打てるようになる入門講座を行った。囲碁を教えてもらった人たちは、つまずかないようにするなどの「注意機能」、複雑な情報を保持して処理し、対応する「ワーキングメモリー」の維持や向上の可能性が示され、教えない人たちは低下したという。その本邦一の囲碁と老化予防の研究者から「国際アマチュアペア碁選手権大会」に出てくれと頼まれた。3級程度で大変弱いが、現状はなかなか候補者募集に苦慮しているとのことで快諾した。当日は持ち時間ペアで持ち時間40分、タイムクロック制、時間切れ即負けであった。初戦、二戦はいずれも、こちらが2子置かせてもらい互角ながら、時間切れ負け。その時の顔写真は、目は虚、一気に3歳は老けて見えた。勝ったペアは「いやーお強い、時間の使い方だけですね」と慰めるが、敗者には傷口に塩を塗られた気分で、そうではないのに上から目線に見えた。午後になり、老父婦との対戦で辛くも勝利、次戦は中学生ペアに大人気なく圧勝(孫と同世代)。その後の写真は、喜色満面、5歳は若返って見えた。真剣勝負、そして勝利。
 何歳になってもいいものですね。これも趣味の効用でしょうか?

    

   連敗後          連勝後